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酔いどれ介護者の減塩食日記

減塩食レシピ作りで料理の修行中。介護の日常と非日常・・・タフでなければ介護はできない、優しくなければ介護をする資格がない。

電気屋の店頭で「鶏肉とわかめの辛味炒め」を料理する

ベッドの足元の棚に置かれたテレビに向かって、父が手をかざす。そのまま数十秒が経つ。何の変化も起こらない。その様子を見ていた母が「仕方なし」に声をかける。「お父さんは魔術師なのですか。テレビのリモコンを握ってないのだから、テレビはつきません!」

 明石家さんまの祖父は晩年、よく親しげに電気ポットと話をしていたという。事情を知らない人は、父の行動もこれに似たもうろくが原因のうっかりだと思うだろう。実は父の場合は、高次脳機能障害における「失行」と呼ばれる症状の一つである。

失行とは、「行為を失う」と書くように、身体機能には何ら問題がないにも関わらず、日常的に行っていた習慣的な行為を行うことができなくなってしまうことを言う。

出典:高次脳機能障害「失行・失認とは?」評価方法と判別のコツ

例えば、父は右半身が麻痺しているので、食事は左手のスプーンで食べるのだが、おかずの1つとして焼き鳥を出したりすると、その焼き鳥の串でご飯をすくって口に運ぼうとする。それこそ魔術師にだって難しそうな芸当だが、こちらが指摘するまで気がつかない。指摘しても、どこが間違っているのかと言いたそうな怪訝な表情をする。ハンドパワーでのテレビのつけ方といい、焼き鳥のスプーンといい、形式は合っているといえば合っている。でも、なぜか実体が見えない。脳の変化がもたらすそんな不思議な光景に今でもたまに出くわす。

デイケア(通所リハビリ)のない日はほぼ一日中寝ている父が、珍しく起きたのだった。起きたといっても、そのままベッド上で過ごす生活だ。テレビを見ることぐらいしかすることはない。おもむろにハンドパワーでテレビをつけようとする。

・・・数十秒が経った。何の変化も起こらない。ふすまを外した隣の和室からその様子を見ていた母が声をかけて、父がミスター・マリックではないことを諭す。この時期の夕方なら、父の大好きな相撲をやっているから、「仕方ない」見せてあげようというわけだ。

母は週一回のデイケアの日以外は、ほぼ一日中ティッシュ箱カバーを作りながら、テレビやDVDで氷川きよしを聞いている。父は年寄りのご多分に漏れず耳が遠い。平気でテレビの音量を50、60にする。あまりのうるささに、母はせっかくのきよしの歌声をのんびりと楽しめなくなる。

だが、その母も片方の耳が聞こえない。子供の頃に中耳炎になったのだが、疎開先には耳鼻科の病院がなく、祖母が「薬草」(母いわく)を絞った液を垂らして治そうとした。それで死にそうなほどの痛みは消えたのだが、肝心の聴力も徐々に消えていったという。そんな悲しんでいいのか笑っていいのか分からない出来事のおかげで、そもそも母のきよしも大音量なのである。それが父の相撲のために、ますます大きくなる。そして、父と母がいる場所から目と鼻の先にダイニングキッチンはある。

「はっけよい、残った!」
「ズンズンズン、ズンドコ♪」*1
稀勢の里の上手投げが決まりました!」
「ゴホゴホ、ゲーゲー」*2
「辛い時でも泣き言は、口を結んで一文字~♪」*3

こんな複数の音源からなる騒音を背中に浴びながら、俺は台所に立っている。「ここは売れない電気屋の店頭か?!」と、なかば気が狂いそうになりながら料理をする。包丁を握る手に余計な力が入ってしまうのも無理はない。

だが最近、包丁とまな板を買い換えた。さすがは名刀・関孫六(って誰?)。切れ味が抜群だ。OXO(オクソー)というメーカーのまな板も安定感がある。ステンレスのキッチンで滑らない。おまけに、食材を切るときのトントン♪の音が心地よい。この音に集中すれば、騒音公害から気を紛らわすことができる。単身の介護者には少なからずあることなのだが、これで当面、包丁を向ける先を間違えずに済みそうだ。*4

という訳で、新しいキッチンツールで作った「鶏肉とわかめの辛味炒め」を。「腎臓病の人のおいしい食事」(主婦の友社)のレシピをアレンジして。

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鶏肉とわかめの辛味炒め

■ 材料(3人分) ■

もも肉 200グラムから
わかめ(戻したもの) 40グラム
きゅうり 2本

A:
水 1カップ
鶏がらスープの素 4グラム
豆板醤 1グラム(小さじ1)
醤油 12グラム(小さじ2)
酒 大さじ2
砂糖 6グラム(小さじ1)

■ 作り方 ■

1.きゅうりは包丁の柄などで叩いて(怪我に注意)ひびを入れ、適当な大きさに切る。
2.鶏肉はそぎ切りで一口大に。
3.ボウルにAを合わせてよく混ぜておく。
4.フライパンにサラダ油大さじ1~を熱し、鶏肉を炒める。
5.鶏肉の色が変わってきたら、わかめ、きゅうり、Aを加えて、汁気がほぼなくなるまで炒め合わせる。

■ 塩分 ■

1.9グラム弱(1人分)
減塩醤油(50%)と減塩の鶏がらスープの素を使って、1.3グラム強。

■ 料理メモ: ■

汁気がなくなるまで炒めよとのことだが、なかなかなくならない!鶏肉にはフォークでフォークでぶすぶす穴も開けたのだが、味もよく染み込んでいなかった。水の量を4分の3カップ(150ミリリットル)にするか、鶏肉に下味(酒をふって塩少々)をつけるか。

汁の味はいい。きゅうりの食感を楽しむためにも、あまり炒めすぎないほうがよろしいかと。

*1:「きよしのズンドコ節」の歌詞です。

*2:実は、これが一番ストレスフルな喉の機能の衰えによる痰咳の音です。

*3:「きよしのズンドコ節」の歌詞です。

*4:本当に注意しましょう。

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