酔いどれ介護者の減塩食日記

減塩食レシピ作りで料理の修行中。介護の日常と非日常・・・タフでなければ介護はできない、優しくなければ介護をする資格がない。

肺炎とゼリーと嘘八百

やはり、厳しい状況になってきた。

月曜日、父の入院先の医師から話があると電話があった。翌日、病院に行く。父は酸素マスクをして寝ていた。呼吸は荒かった。

先生の話。よくなりそうな気配もあったが、容体が急に悪くなった。レントゲン検査の結果、肺の影が広がっていた。高熱を出した。酸素の取り込みも悪くなった。食欲もなくなったので、誤嚥の危険性を考慮して食事は出していない。

最悪の事態を覚悟しておいたほうがいいのですね、と聞く。これまで訪問診療でも世話になっている主治医は頷いた。

病室に戻る。ベッドの脇のテーブルには食事の記録表がある。確かに、この2、3日の朝昼晩の食事の欄にはきれいに0の数字が並んでいた。見回りに来た若い女性看護師に、無理してでも食べさせたほうがいいのではと、聞いてみる。いや、なかば頼み込んだ。返ってきた答えは医師のものと変わりなかった。

でも突然、こんなことを言い出した。「ウイダーインゼリーを買ってきれくれますか」。ゼリー?どうしてですか?「それなら食べられるかもしれませんので」

医師の許可を得ないでそんなことをしてもいいものかと訝ったが、それを質すことなく、近くのコンビニに買いに行った。ウィダーインゼリーはなかった。代わりに、そのコンビニのオリジナルブランド(多分)のバナナとアップルのゼリーと、ゼリーがいいのならヨーグルトもいいのではとヨーグルトも買って病院に戻った。

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看護師が父を起こしてバナナのゼリーを与えると、父は美味しそうにちゅーちゅーと吸った。もうこのへんでいいのではと看護師が取り上げようとすると、父は大好きなおもちゃをあてがわれた子供のようにバナナのゼリーを抱え込みながら完食した。

帰宅後、ネットで肺炎のことを調べる。こんなページを見つけた。

まず、呼吸すると胸がズキリと痛みます。肺がやられているわけですからね。深呼吸したら痛むのではなく、通常の呼吸でギリリッと痛みます。このため普段の呼吸が非常に浅く、速くなります。
(中略)
食欲はとうぜんゼロ。ウイダーイン(エネルギー補給ゼリー)と少しのご飯を口にできるだけ。あとは飲み物。

出典:知ってる?肺炎が進行するとこうなるよ【体験談】 | Zafiel

少しは食べられるようになったか。翌日、夕食時を見計らって様子を見に行った。朝昼食は少し食べたようだった。でも、ひどい状態だった。ぜーぜーという荒い呼吸のまま、体は横に向き、パジャマははだけ、掛け布団は足元に丸まっていた。

俺の顔を認めると、早く帰宅させろという感じで訴えた。苦しそうな顔で怒り続けた。失語症だから何を言っているのかは分からない。俺に向かって両手を合わせもした。だから、恐らく、それ以外にはない。でも、こんな状態でどうして普通の生活ができようか。

30分ほどいたが、正視に耐えなかった。つらかった。看護師に熱や血圧に異常がないことを確かめて、父にはトイレに行くふりをしてその場から逃げるようにして帰った。俺が一人で帰ることを告げれば、暴れることができない体で暴れだすことは間違いなかった。

帰宅後、母が父の様子を聞いてくる。自由に見舞いに行くことができない体だから、余計に心配している。「それほど変わりないよ」。俺は嘘をつく。本当のことを言えば、狭心症の母の体に障る。これまでに、こういう嘘を何度ついてきたことか。正しいことなのかどうかは分からない。「でも、退院させろと怒る気力があるくらいだから、きっと大丈夫だよ」と続ける。この言葉に嘘はない。この言葉に、自分でも一縷の望みを託している。

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