酔いどれ介護者の減塩食日記

料理、家庭菜園(近日開始)、クロスバイク、介護・・・与太話を交えて。

消えたさんまの尻尾~世にも恐ろしいグリル童話~

今のいまのあるところに、けんろーさんという風邪をひいたおじさんがいました。けんろーさんのお父さんは半年前に死にました。重い病気のせいで、最後は満足に自分の好きなものも食べられませんでした。

けんろーさんには年老いたお母さんもいます。お父さんが死んだせいなのか、お母さんはみるみる弱ってきました。持病の心臓病や便秘による腹痛、足腰の衰えに加えて、ほぼ全身の不調を訴えます。暖房を上げても寒い、歯が痛い、目の周りは真っ赤っ赤・・・まるで病気のAmazon.co.jpです。

けんろーさんは親不孝な人生を歩んできました。だから、老い先の短かろう母さんには、せめておいしいものを食べさせてあげたい。そんな思いから、スーパーでさんまを買いました。そして、焼き魚の味がいちばん堪能できるはずのグリルの焼き網の上に並べました。お父さんが愛した腹わたも残っている丸ごとのさんま。準備万端、グリルのオート機能「姿焼き・焼き加減標準」のスイッチを押しました。

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さんまの塩焼き

ご覧の通り、焦げました。さんまの焼死体のようです。その心得はありました。だから、化粧塩はしました。それなのに、真っ黒になったさんまの尻尾もあっけなく崩れ落ちました。尻尾のないさんまの塩焼き。それがこんなにもみすぼらしいものになるのか。悲しくなったけんろーさんは風邪をひいていたので、涙を流すかわりに鼻水を流しました。

お父さんの生前、けんろーさんは食卓に焼き魚を出したことがあります。お魚はお父さんの大好物でした。でも、脳梗塞による半身不随のために、利き手ではない左手のスプーンで食べなければなりません。けんろーさんは魚の骨を一本一本取り除き、身をほぐしました。

どこからどう見ても、それはもう焼き魚の体をなしていません。何の魚なのかも分かりません。言葉は悪いですが、まるで動物のえさのようでした。おいしそうと感じられるところは1ミリもありません。

それでもお父さんは、その、人の食べ物とは思われないものを平然と黙々と慣れない左手ですくって食べました。普通の人だったら決して食べたいとは思わないでしょう。脳をやられるとは、こういうことなのか・・・。そのときのけんろうさんは風邪をひいていなかったので、心の中で涙を流しました。

つづく